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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)4593号 判決

第一事件原告

大阪国際観光バス株式会社

第一次事件被告

福本一義

第二事件原告

富士火災海上保険株式会社

第二次事件被告

大阪国際観光バス株式会社

第三事件原告

福本一義

第三次事件被告

吉田克弘

ほか一名

主文

一  被告福本は、原告大阪国際観光バスに対し、金二三五万七四三〇円及びこれに対する平成七年九月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告大阪国際観光バスのその余の第一事件請求を棄却する。

三  原告富士火災の第二事件請求及び被告福本の第三事件請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は被告福本及び原告富士火災の負担とする。

五  この判決は、一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(第一事件)

一  請求の趣旨

1 被告福本は、原告大阪国際観光バスに対し、金二五四万三四三〇円及びこれに対する平成七年九月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告福本の負担とする。

3 1項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告大阪国際観光バスの第一事件請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告大阪国際観光バスの負担とする。

(第二事件)

一  請求の趣旨

1 原告大阪国際観光バスは、原告富士火災に対し、金五〇万円及びこれに対する平成八年一月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2 原告大阪国際観光バスは、原告富士火災に対し、金二三万三三五六円及びこれに対する平成八年四月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は原告大阪国際観光バスの負担とする。

4 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告富士火災の第二事件請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告富士火災の負担とする。

(第三事件)

一  請求の趣旨

1 原告大阪国際観光バス及び被告谷本は、被告福本に対し、連帯して、金四八一万〇〇一一円及びこれに対する平成七年九月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は原告大阪国際観光バス及び被告谷本の負担とする。

3 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 被告福本の第三事件請求を棄却する。

2 訴訟費用は被告福本の負担とする。

第二当事者の主張

(第一事件)

一  請求原因

1(本件事故)

(一) 日時 平成七年九月二三日午後三時一〇分ころ

(二) 場所 鳥取県東伯郡赤碕町大字別所四八九―一先県道上

(三) 関係車両 被告福本運転の普通乗用自動車(鳥取五七と六四四八)(以下「福本車両」という。)

原告大阪国際観光バス所有、被告谷本運転の大型乗用自動車(大阪二二か・五四七)(以下「本件バス」という。)

(四) 態様 正面衝突

2(責任)

本件事故は、原告大阪国際観光バスの従業員である被告谷本が、乗客一一名を乗せて本件事故現場を徐行して進行中、折からの雨でスリップしたのか、福本車両がセンターラインを越え本件バスの進行車線に進入したため発生した事故であり、被告福本には、民法七〇九条に基づき、原告大阪国際観光バスが被った損害について賠償する責任がある。

3(損害)

(一) 修理費 一一六万三九〇〇円

(二) 休車損害 七四万〇六〇〇円

一日二万一一六〇円の割合で、平成七年九月二三日から同年一〇月二三日までの三五日分

(三) 代替バス代(中央タクシーへの支払分) 六万七九八〇円

本件事故後、本件バスの乗客を目的地(玉造温泉山の井ホテルまで)に送るため、緊急に中央タクシーの小型バスを手配した費用

(四) 応援バス代 二七万九八五〇円

本件バスが走行不能状態となったので、翌平成七年九月二四日、原告大阪国際観光バスの別のバスを現地に向かわせ、予定通り乗客を搬送した費用

(五) 回送代 六万一一〇〇円

早く修理にかかってほしいとの被告福本と自動車保険契約を締結している原告富士火災原告の要請で本件バスを修理工場である京滋三菱ふそうまで回送するため、原告大阪国際観光バスにおいて運転者を配置した費用

(六) 弁護士費用 二三万円

よって、原告大阪国際観光バスは被告福本に対し、民法七〇九条による損害賠償請求権に基づき、金二五四万三四三〇円及びこれに対する本件事故の日である平成七年九月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1は認める。

2 同2のうち、本件バスを被告谷本が運転していたことは認め、本件バスに乗客一一名が乗っていたことは知らず、本件バスが本件事故現場を徐行して進行していたこと、福本車両が進行中折からの雨でスリップしたこと、福本車両がセンターラインを越え、本件バスの進行車線に進入したために本件事故が起こったことは否認する。

被告福本に民法七〇九条に基づく賠償責任があることは争う。

本件事故は、平成七年九月二三日午後三時一〇分ころ、鳥取県東伯郡赤碕町大字別所四八九―一先県道上において、走行中の本件バスが中央線を越え、対向車線を走行していた福本車両に衝突したものである。

よって、本件事故は、原告の一方的過失によるものである。

3 同3(一)ないし(五)は知らず、(六)は否認する。

(一) 休車損

バスの休車損害は、修理期間中代替すべき予備車あるいは遊休車がないという主張立証がなければ認められない(長崎地裁佐世保支部判決昭和五五年二月二六日交通民集一三巻一号二五九頁)。

その上、観光バスは、路線バスなどと異なり、客の利用申し込みがあって初めて稼働する車両であるから、原告大阪国際観光バスは、予備車あるいは遊休車の不存在に加えて、本件バスの修理中に、利用申し込みを断った事実の主張立証がなければ休車損害は認められない。

ちなみに、本件事故の翌日、原告大阪国際観光バスは自社の応援バスを手配し、予定どおり乗客を搬送しているので、少なくとも本件事故の翌日には原告に予備車があったと言える。

(二) 代替バス代

本件事故とは相当因果関係がない。

(三) 応援バス代

予定どおり乗客を搬送しているのであるから、これは乗客からの報酬で填補されている費用と言える。

よって、原告大阪国際観光バスには損害が発生していないか、少なくとも金額が過大である。

(四) 回送代

顧客にバス回送費用を請求した場合と同一視して金額を算出している。

このような方法によって算出される損害が本件事故とは相当因果関係にないことは明らかである。

(第二事件)

一  請求原因

1(本件事故)

第一事件請求原因1と同じ

2(責任)

本件事故は、本件バスが観光客を乗せて運行中、センターラインを越えて福本車両と正面衝突したものであるから、被告谷本は、民法七〇九条に基づく責任を負うところ、本件事故は、原告大阪国際観光バスの被用者たる被告谷本が原告大阪国際観光バスの業務の執行につき発生させたものであるから、原告大阪国際観光バスは、民法七一五条の責任を負う。

3(損害)

(一) 車両損害 五七万円

本件事故により、福本車両は全損となり、被告福本に五七万円(車両時価額)の損害が生じた。

(二) 第三者損害 二三万三三五六円

本件事故で、福本車両が本件バスに衝突した反動で、本件事故現場脇の岩田釣具店店舗及び自動販売機(いずれも岩田則正所有)が損壊し、二三万三三五六円の損害が生じた。

4(保険代位)

(一) 保険契約の締結

原告富士火災と被告福本とは、次の内容を含む自動車保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結した。

(1) 保険の目的 福本車両

(2) 被保険者 被告福本

(3) 保険期間 平成七年四月二一日から平成八年四月二一日

(4) 保険金額 五〇万円

(5) 保険の内容 自家用自動車総合保険(SAP)

(車両条項)

第一条〈1〉 原告富士火災は、衝突、接触……その他偶然な事故によって保険証券記載の自動車(以下「被告保険自動車」といいます。)に生じた損害を、この車両条項および一般条項に従い、被保険者に対して填補します。

(賠償責任条項)

第二条 原告富士火災は、被告保険自動車の所有、使用または管理に起因して他人の財物を滅失または汚損すること(以下「対物事故」といいます。)により、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を、この賠償責任条項および一般条項に従い、填補します。

(二) 原告富士火災は被告福本との本件保険契約に基づき、平成八年一月一六日、被告福本に対し、車両保険金五〇万円を支払った。

また、原告富士火災は被告福本との自動車任意保険契約に基づき、平成八年四月一二日、岩田則正に対し、対物保険金二三万三三五六円を支払った。

したがって、原告富士火災は、商法六六二条に基づき、被告福本が原告大阪国際観光バスに対して有していた損害賠償請求権のうち、右合計七三万三三五六円の請求権を取得した。

よって、原告富士火災は原告大阪国際観光バスに対し、車両損害金五〇万円及びこれに対する保険金支払日の翌日である平成八年一月一七日から、岩田則正に支払った対物保険金二三万三三五六円及びこれに対する保険金支払日の翌日である平成八年四月一三日から、各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

二 請求原因に対する認否

1  請求原因1は認める。

2  同2は争う。

3  同3は争う。

4  同4は知らない。

(第三事件)

一  請求原因

1(本件事故)

第一事件請求原因1と同じ

2(責任)

(一) 本件事故は、本件バスが観光客を乗せて運行中、センターラインを越えて福本車両と正面衝突したものであるから、本件事故につき、被告谷本は被告福本に対し、自動車損害賠償保障法三条ないし民法七〇九条に基づく責任を負う。

(二) 本件事故は、原告大阪国際観光バスの被用者である被告谷本が原告大阪国際観光バス所有の本件バスを運転するという業務の執行につき発生させたものであり、本件バスの運行供用者であるから、原告大阪国際観光バスは被告福本に対し、自動車損害賠償保障法三条ないし民法七一五条に基づく責任を負う。

3(損害) 四八一万〇〇一一円

(一) 治療費 一二二万二二六一円

本件事故により被告福本は、頸椎捻挫、腰椎捻挫などの傷害を受け、次のとおり入通院治療を受け、その治療費の合計は一二二万二二六一円である。

(1) 医療法人共済会清水病院

平成七年九月二三日から同月二五日まで通院

治療費 四万一四四一円

(2) 医療法人社団キマチ外科整形外科医院

平成七年九月二五日から同年一一月三〇日まで入院六六日間

平成七年一二月一日から平成八年三月一一日まで通院

治療費 一一八万〇八二〇円

(二) 通院交通費 七万九二〇〇円

被告福本がキマチ医院に一回通院するためには、往復一一〇〇円の交通費が必要であり、完治までに七二回通院したから、通院交通費は、七万九二〇〇円となる。

1100円×72日=7万9200円

(三) 入院雑費 八万五八〇〇円

1300円×66日=8万5800円

(四) 休業損害 二九六万二七五〇円

被告福本は、本件事故前、縫製の自営業を営んでいたところ、本件事故日である平成七年九月二三日から平成八年三月一一日までの一七〇日間休業を余儀なくされた。

被告福本は、本件事故当時五八歳であり、五八歳の賃金センサス(平成六年賃金センサス産業計・企業規模計・男子労働者)による平均年収は六三六万一二〇〇円であるから、本件事故により被告福本が被った休業損害は、二九六万二七五〇円とするのが相当である。

636万1200円÷365日×170日=296万2750円

(五) 入通院慰謝料 一一一万円

(六) 弁護士費用 五五万円

4(既払額) 一二〇万円

被告福本は、本件事故により自賠責保険から、一二〇万円の支払を受けた。

よって、被告福本は原告大阪国際観光バス及び被告谷本に対し、自動車損害賠償保障法三条、民法七〇九条、七一五条による損害賠償請求として、連帯して、金四八一万〇〇一一円及びこれに対する本件事故の日である平成七年九月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1は認める。

2 同2(一)は争う。

同2(二)のうち、原告大阪国際観光バスが被告谷本を使用していること、本件バスの所有者であること、本件バスの運行供用者であることは認め、責任は争う。

3 同3は争う。

(一) 被告福本は、本件バスと衝突の後三秒ほどして突然自らバックして釣具店の自動販売機に衝突している。

被告福本の頸椎捻挫、腰椎捻挫の症状は、このときに生じたものと思われる。

(二) 入院治療の必要性、通院治療の必要性も疑問であるし、休業の必要性及び現実に休業したかも疑問である。

(三) 本件事故直後の話し合いでは、治療費についても被告福本負担で治療するとのことであり、現に今まで一度も一切の損害の請求も受けたこともないし、治療していたことも聞かされたこともなかった。

4 同4は認める。

三  抗弁

本件事故は、被告福本の過失により惹起されたもので、原告大阪国際観光バス及び運転者である被告谷本に過失はなく、本件バスに構造上の欠陥又は機能の障害はなかったから、原告大阪国際観光バスは、本件事故についての自動車損害賠償保障法三条に基く責任はない。

四  抗弁に対する認否

抗弁は否認する。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

第一第一事件

一  請求原因1(本件事故)は当事者間に争いがない。

二  請求原因2(責任)について

証拠(甲七〔平成七年九月二三日午後三時四五分から被告谷本立会のもと実施された実況見分調書〕、証人榎尾尚之)によれば、次の事実が認められる。

1  本件事故現場の状況は、別紙交通事故現場見取図1記載のとおりであり、本件バスは、東伯町方面から中山町方面に向かい進行し、福本車両は中山町方面から東伯町方面に向かい進行していた。

2  本件事故により、本件バスは、右前バンパー、ボディーが破損し(小破)(破損場所は右前部に限定されている。)、福本車両は前バンパー、グリル、左右前照灯が破損し、ボンネットが凸損した(中破)(破損場所は前部全面にわたっている。)。

3  本件事故現場に残された、本件バス及び福本車両の破片は、別紙交通事故現場見取図1の「自動車の破片散乱」と記載された場所に散乱していたが、右位置は、本件バスの進行車線内である。

以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

右に認定の事実に証拠(甲九、一〇、証人増田守、被告谷本本人)を総合すると、本件事故の衝突地点は別紙交通事故現場見取図の自動車の破片が散乱している付近であり、本件事故は福本車両がセンターラインを越えて本件バスの進行車線に進入した結果惹起されたものであることが認められる。

したがって、本件事故は、被告福本の一方的過失によるものである。

なお、甲第六号証(平成七年九月二八日、被告谷本及び被告福本の立会のもと実施された実況見分調書)には、本件事故の衝突地点を別紙交通事故現場見取図2の〈×〉地点とし、同図面記載のスリップ痕が本件バスのスリップ痕である旨の記載があるが、右衝突地点では前記認定の自動車の破片の散乱状況、場所を合理的に説明することができず、また、前記甲第七号証の実況見分が実施された際本件バスが停止していた地点(別紙交通事故現場見取図1の〈1〉地点)は、本件事故後本件バスの乗客であった増田守が一メートル程度後退させた後の地点であること(証人増田守)とも整合しないから、右記載は採用することができず、他に甲第六号証に記載されているスリップ痕が本件バスのものであることを認めるに足りる証拠はない(なお、本件事故当日行われた実況見分時には右スリップ痕は発見されていない〔甲七〕。)。

右のとおりであり、本件バスがセンターラインを越えて福本車両に衝突したとする乙第一号証(被告福本作成の陳述書)及び被告福本本人尋問の結果は採用できない。

三  請求原因3(損害)について

1  修理費 一一六万三九〇〇円

証拠(甲一、一一)によれば、本件事故による本件バスの修理費は一一六万三九〇〇円であることが認められる。

2  休車損害 七四万〇六〇〇円

証拠(甲二の1、2、一一)によれば、修理のために本件バスは平成七年九月二三日から同年一〇月二三日まで休車したことが認められ、本件バスと同種の小型バスの社団法人大阪バス協会における平成六年度の運送収入を基礎にして、経費を差し引いたうえで一日当たりの休車損害を計算すると一日当たり二万一一六〇円となることが認められるから、その間の休車損害は七四万〇六〇〇円と認めるのが相当である。

被告福本は休車損害について種々主張しているが、独自の見解であり、前記認定判断を左右するものではない。

3  代替バス代 六万七九八〇円

証拠(甲三、一一)によれば、本件バスの乗客を目的地である玉造温泉山の井ホテルまで搬送し、本件事故の翌日(平成七年九月二四日)原告大阪国際観光バスの応援バスが到着するまで(松江工芸館)乗客を搬送するために中央タクシー株式会社(鳥取県倉吉市所在)の小型バスを賃貸し、その費用として六万七九八〇円を要したことが認められ、これは本件事故による損害である。

4  応援バス代 一二万三八五〇円

証拠(甲四、一一)によれば、本件事故により本件バスが走行不能状態となり、平成七年九月二四日、原告大阪国際観光バスの別の車両を松江工芸館に向かわせ、そこで本件バスの乗客を乗せて帰阪したこと、右松江工芸館までに要した費用は、運賃一〇万八〇〇〇円、高速道路通行料一万五八五〇円(近畿道一一五〇円、中国自動車道・米子道一万四七〇〇円)の合計一二万三八五〇円であることが認められ、右が本件交通事故と相当因果関係にある応援バス代であるというべきである。

なお、原告大阪国際観光バスは、右の他に応援バスの乗客を乗せて帰阪するに要した運賃一五万六〇〇〇円も本件事故による損害であるとして請求しているが、右は本件事故がなくても必要であった費用であるというべきであって、本件事故と因果関係がない。

5  回送代 六万一一〇〇円

証拠(甲五、一一)によれば、本件バスを修理工場まで解ママするために六万一一〇〇円を要したことが認められる。

6  以上を合計すると二一五万七四三〇円となる。

7  弁護士費用 二〇万円

本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は二〇万円と認めるのが相当である。

四  以上次第で、原告大阪国際観光バスの第一事件請求は、二三五万七四三〇円及びこれに対する本件事故の日である平成七年九月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。

第二第二事件

一  請求原因1(本件事故)は当事者間に争いがない。

二  請求原因2(責任)について

第一事件の請求原因2についての判断のとおりであり、本件事故は被告福本の過失により惹起されたものであり、被告谷本の過失を認めることはできない。

三  よって、その余の点について判断するまでもなく原告富士火災の第二事件請求は理由がない。

第三第三事件

一  請求原因1(本件事故)は当事者間に争いがない。

二  請求原因2(責任)について

1  被告谷本に本件事故に関する過失を認めることができないことは前記判断のとおりである。

また、被告谷本は本件バスの運転者ではあるが、運行供用者ではないから、被告谷本に対する自動車損害賠償保障法三条による請求は理由がない。

2  原告大阪国際観光バスが本件バスの運行供用者であることは当事者間に争いがない。

三  抗弁(免責)について

第一事件請求原因2についての判断のとおりであり、本件事故は被告福本の過失により惹起されたもので、原告大阪国際観光バス及び被告谷本に過失はなく、証拠(甲七、被告谷本本人)によれば、本件事故当時本件バスに構造上の欠陥又は機能の障害はなかったことが認められるから、抗弁は理由がある。

四  以上の次第で、被告福本の第三事件請求はその余の点について判断するまでもなく理由がない。

第四結論

よって、第一事件請求は、前記限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、第二事件及び第三事件請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法六一条、六四条、六五条を、仮執行宣言について同法二五九条一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 吉波佳希)

交通事故現場見取図1交通事故現場見取図2

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